2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

蜻蛉の事

昼間はまだ真夏のように暑いが、朝晩はだいぶ涼しくなってきた。 リンと散歩に行く時間帯は、だいたい涼しいので、とても快適だ。 夕方、散歩に出掛けた時、川の脇を通ったら蜻蛉がたくさん飛んでいたので驚いた。 見上げると、随分と空高くまで、飛んでいる…

くしゃみの事

夕方近く、タカハシさんから連絡があって、飲みに行きませんかと誘われた。 秋の気配も微かに漂い始めたので、行く夏を惜しみつつ、ビアガーデンに行こうということになった。 僕が好きそうな、いい所があると案内してもらったのは、信濃町駅を降りてすぐの…

夏休み最後の日の事

夏休みらしいといえば夏休みらしい連休だったけれど、気が付くと最後の日だった。 リンと朝の散歩に行き、戻って来ると座敷では妹がごろごろしている。布団は畳んであるが、起きているとは言い難い。 そう思って眺めていると、リンが妹に飛びついて、遊んで…

送り火の事

朝、リンと散歩へ行こうとすると、リンが水色のボールをくわえている。 昨日、父と遊んでいた桃色のボールの色違いらしい。リンに、ボールふたつももらったのか?と聞いてみるが、しっぽをぱたぱたと振るばかりだった。目が笑っているようにも見えた。 今日…

夏休みらしい一日の事

朝早くに目が覚めた。まだ誰も起きて来る気配がない。いつものようにサカエダさんに挨拶をして、リンと散歩に行くことにした。 人が多くても、サカエダさんの方は一向に気にしていないようで、風鈴の見える窓際でにこにこと座っている。 リンとのんびり土手…

両親とリンの事

リンと朝の散歩に行き、朝食はまた祖母の用意してくれたものを四人で食べる。なんとなく、学生の頃の夏休みを思い出した。 昼頃、両親が顔を出した。一泊していくと言う。 リンと両親は初対面だったのだが、リンはいつものように訪ねてくる人間には歓迎の意…

未草とお盆の事

祖母が、朝早くから仏壇の飾り付けをしている。 仏間はあるが、仏壇は祖父母が現在住んでいる静岡の家にあるので普段は何もない。僕も特に用はないので、掃除に入る程度だ。 祖母が、位牌だけを持ってきたのだ。気軽に移動して良いものなのかは分からないが…

曾祖父の美術館の事

リンと朝の散歩に行ってから、イズミヤさんの家へ出かける。 祖父母と僕に加え、妹も一緒に行く事になり、リンはサカエダさんに任せて家を出る。 電車で一時間ほど移動する。普段行かない土地だったが、来てしまえばどうということもない距離だ。 駅からは少…

夏休み前日の事

朝起きると、すでに祖母が朝食の支度に取りかかっている。祖父は、居間でテレビを見ている。 長くこの家に暮らしていた二人を、家の方も当然のように受け入れているように感じる。それほどしっくりと馴染んでいて、見ているこちらもよく分からない安心感を得…

祖父母が来た話

朝、リンと散歩に行く前に、庭の餌台にオレンジを乗せる。 池の周囲には、雀が何羽かちょこちょこ跳ねていたが、僕の気配でみんな飛んで行ってしまった。 池の中をのぞいてみたが、金魚は流木の陰に隠れているようで姿が見えなかった。 妹は、昨夜座敷で夜更…

夏祭りと金魚の事

お盆休みの前後は、有給休暇を取る人間が多いので、社内がなんとなくガランとしている。 取引先の企業も似たようなものだから、人が減ったからといって、仕事の量が増えるわけでもない。 僕もヨネヤも、お盆休みを長くするつもりはなく、夏休みは会社のカレ…

休日の話

雨は夜の内に上がったようで、窓の外の洗いたての空気が気持ち良かった。 僕とリンが起き出すと、座敷で寝ていたヨネヤが廊下に顔を出した。 寝ぼけた顔で、散歩なら一緒に行くと言うので玄関で待っていると、リンは妙に嬉しそうにヨネヤが来る廊下の方を向…

餌台と虫干しの事

今朝は、昨日会社帰りに買ったオレンジを切って、出しっぱなしにしていた即席の餌台に乗せてから散歩に出かけた。 昨日出した林檎は、あらかた無くなっていて、たぶんメジロ以外によく池に集まっているスズメあたりも食べて行ったのだろう。 庭を出る時に何…

メジロの事

朝、リンと散歩に行く前に、池の近くに脚立を出して板を乗せただけの簡単な台を作った。 その上に、適当な大きさに切った林檎を乗せる。 昨日の鳥がまた来てくれたら、後でちゃんとした台を作ろうと思う。 蝉が朝から忙しなく鳴いている。 公園の脇を通って…

鳥の声と林檎の事

朝の散歩から戻り、いつものようにリンと庭へ回って、リンが池の水を飲んでいるのを眺めていたら、庭木の上の方から綺麗な鳥の囀りが聞こえてきた。 澄んだ高音で、複雑な旋律を器用に囀っている。姿は見えない。 リンが鼻先を空に向けて、耳を澄ますように…

散歩中の事

早朝、リンと散歩をしていると、通り掛かった家の庭先から声が聞こえた。 声の主は男のようで、しまい忘れるとはまったくいまいましい愚か者だとか、このろくでなしだとか、どうやら不満を述べているらしい。 声が聞こえた庭先は、木に阻まれてちらとも見え…

本の話

今朝も電車でうたた寝をしていると、降りる駅に着く少し前に、ねえ!という声に起こされた。 この声にもほとんど慣れてしまった。寝過ごす心配はいらないようだ。 昼休みに会社の食堂で食事をする時は、大抵ヨネヤと二人のことが多い。 そこに、昼休み前に会…

電車での事

朝、出勤の電車で、小学生の一団と乗り合わせた。 座席は埋まっていたので、ドアの脇に立って壁に寄り掛かって車内の吊り広告を眺め、それから車内全体をなんとなく眺める。 小学生は男の子四人、女の子五人の集団だった。 はじめは、男女に分かれて七人掛け…

烏瓜の花の事

深夜から、降るような蝉の音が、開け放った窓の網戸の向こうから聞こえてくる。 まるでぴったりと蓋でもしたように、風は少しも吹かない。 居間の風鈴が鳴れば、少しはましだろうと思うのだが、団扇であおいでみてもわざとらしいばかりだった。 サカエダさん…