休日の話

雨は夜の内に上がったようで、窓の外の洗いたての空気が気持ち良かった。
僕とリンが起き出すと、座敷で寝ていたヨネヤが廊下に顔を出した。
寝ぼけた顔で、散歩なら一緒に行くと言うので玄関で待っていると、リンは妙に嬉しそうにヨネヤが来る廊下の方を向いて待っている。人数が多いとリンも楽しいのだろう。
散歩に出る前に、昨日作った餌台にオレンジを切って出しておいた。


ヨネヤが紐を持ちたいと言うのでリンを任せてしまうと、なんとなく手持ち無沙汰になった。
リンが時折立ち止まってヨネヤと僕の方を見る。
今日は公園の方へ行こうかと言ってみたら、なんだか納得したようで、それきりなんでもない顔をしていた。


散歩から戻って庭をこっそり覗くと、やはりメジロが来ている。
すっかり物慣れた様子でおいしそうにオレンジを啄んでいた。
ヨネヤが感心したようなため息をつくと、何故かリンが得意気にヨネヤを見上げていたのが可笑しかった。
朝飯を食べてから、蔵の虫干しの続きに取りかかる。
途中で祖母から電話が来て、明後日の十日に祖父と二人でこちらに来るという連絡。
イズミヤさんの所へは、十二日に行くから忘れないようにと念を押された。


ヨネヤは今日も虫干しの手伝いを買って出てくれて、本を運び出し、また元に戻すところまで手伝ってくれた。
夕方近くにリンと一緒に、帰るヨネヤを駅まで送る。
今度お礼をするから何がいいかと訊ねると、また虫干しの手伝いをしたいと言う。
それならその後でささやかな宴会でもしようかと言ったら、それがいいと答えて、別れ際にリンの頭をわしわしと撫でてから帰って行った。


夜、妹から電話。お祖母ちゃんとお祖父ちゃんが帰って来たら、泊まりに行きたいと言うので、いつでも来て良いと答える。
それじゃあ、行く時に連絡をするねと言って電話は切れた。妹は祖母の性格に似て、いつも行動が唐突だ。
リンに、しばらくしたら賑やかになるよと言ったら、嬉しそうに鼻をすり寄せて来る。
リンも大分成長してきたので、そろそろ座敷犬を卒業しなければならないなと、ふと思った。