蜻蛉の事

昼間はまだ真夏のように暑いが、朝晩はだいぶ涼しくなってきた。
リンと散歩に行く時間帯は、だいたい涼しいので、とても快適だ。
夕方、散歩に出掛けた時、川の脇を通ったら蜻蛉がたくさん飛んでいたので驚いた。
見上げると、随分と空高くまで、飛んでいる。
僕が立ち止まったので、リンも立ち止まって、僕の方を見る。
見上げた時に、リンも蜻蛉に気がついたらしく、嬉しそうに尻尾を振って小さな声で一度吠えた。
しばらく眺めていたら、藪蚊に喰われたので、あわてて退散する。


家に帰って庭を眺めていたら、庭木の一本にツクツクボウシがとまって鳴いている。
陽が傾くにつれ、コオロギなどの秋の虫も鳴き始める。


風が通るのが気持ちいいので、家中の窓を開け放って夕食をとった。
居間の風鈴が鳴ると、リンとサカエダさんが耳を澄ましているので、つけていたテレビを消した。
風の音と、虫の音。それから近所の家の音が微かに聞こえてくる。
夏と秋の境目は、どことなく寂しいような気がしていたが、思いの外賑やかだ。