餌台と虫干しの事

今朝は、昨日会社帰りに買ったオレンジを切って、出しっぱなしにしていた即席の餌台に乗せてから散歩に出かけた。
昨日出した林檎は、あらかた無くなっていて、たぶんメジロ以外によく池に集まっているスズメあたりも食べて行ったのだろう。
庭を出る時に何を思ったのか、リンが桜の木に向かって、くふんと鼻を鳴らしていた。


曇り空で、なんとなくすっきりしない天気だった。
僕が空を眺めながら歩いていたら、リンも空を見上げながら歩いていたので笑ってしまった。
リンは何を気にしていたのだろう。
そう思って、どうかした?と聞いてみたら、くふうとため息みたいな返事が返って来た。

散歩から戻り、そっと庭を覗いてみると、またメジロが来ていた。
昨日と同じ奴だろうか。おいしそうにつついている。
リンもそうだが、真剣に食べる姿は見ていて嬉しくなるものだ。
しばらく眺めていたら、またリンが池に向かって駆け出して行き、メジロは庭木に隠れたようだった。


午前中にヨネヤが家まで来ると言うので、簡単な朝食をすませてから、座敷などを掃除する。
座敷を箒で掃いていたら、リンが必死の様子で箒を追いかけ回すので、途中から掃除をしているのか遊んでいるのか分からなくなった。


九時頃にヨネヤがやって来て、来るなり早速、餌台を作ろうと言う。
蔵に置いてあった材木を適当に選んで、二人がかりで適当に組み、三十分ほどで即興の餌台が出来上がった。
適当に作ったわりに出来は良くて、僕たちの作業を黙って眺めていたリンまで満足そうに見えた。
庭の、奥から数えて三番目に植わっている梅の木の近くに、出来上がった餌台を置いた。

座敷で休憩しようと家に上がると、ヨネヤは居間の窓際にいたサカエダさんに挨拶をしている。
僕が台所で麦茶を用意している間、鳥の餌台を作ったと報告しているようだった。


休みの特に予定のない日は、蔵の中にあるものを虫干ししているのだと話したら、ヨネヤは、手伝うから今からやろうと妙に乗り気だ。
今度は家の裏にある庭へ回って、虫干しをすることになった。
蔵の中に入るとヨネヤは、なんだか嬉しそうに中を見回しながら、個人宅で普通に使われている蔵、しかも土蔵に入るのは初めてだと言っていた。
確かに使ってはいるが、頻繁に動かすものはほとんどない。
奥の方には何が仕舞ってあるのか分からない箱などもあった。


二階の本を先に庭先へ引っ張り出してきて、日陰に置いた台の上に並べる。
今日は祖父や祖母の蔵書が入っている本棚だった。
大半が、古風な文体の本で占められている。
二人で取り掛かったので、昼までに本棚ひとつ分を運び出すことができた。


さすがに少し疲れたので、サカエダさんとリンに留守を任せて近所の蕎麦屋に行って昼飯を食べることにした。
ヨネヤは鴨南蛮で、僕は天せいろを食す。
帰りに夕飯の食材を買って帰った。


戻って続きをやろうかと思ったら、少し風が出てきた。天気が変わるかも知れないので、並べた本を片付けることにした。
居間の窓から、サカエダさんが僕たちの作業を楽しそうに眺めている。リンはその窓の外で、やはり温和しく座って眺めている。
全ての本を仕舞い終えてから家に戻ると、まるで待っていたように雷が鳴り出し、じきに雨が降ってきた。


夕飯を作り終えてもまだ雷雨は続いていて、座敷で外を眺めながら夕飯を食べる。リンも縁側の手前に座って空が光るのを見ていた。
結局ヨネヤは泊まっていくことになり、リンは夜になっても遊んでもらえて上機嫌だった。


今朝は、昨日会社帰りに買ったオレンジを切って、出しっぱなしにしていた即席の餌台に乗せてから散歩に出かけた。
昨日出した林檎は、あらかた無くなっていて、たぶんメジロ以外によく池に集まっているスズメあたりも食べて行ったのだろう。
庭を出る時に何を思ったのか、リンが桜の木に向かって、くふんと鼻を鳴らしていた。


曇り空で、なんとなくすっきりしない天気だった。
僕が空を眺めながら歩いていたら、リンも空を見上げながら歩いていたので笑ってしまった。
リンは何を気にしていたのだろう。
そう思って、どうかした?と聞いてみたら、くふうとため息みたいな返事が返って来た。

散歩から戻り、そっと庭を覗いてみると、またメジロが来ていた。
昨日と同じ奴だろうか。おいしそうにつついている。
リンもそうだが、真剣に食べる姿は見ていて嬉しくなるものだ。
しばらく眺めていたら、またリンが池に向かって駆け出して行き、メジロは庭木に隠れたようだった。


午前中にヨネヤが家まで来ると言うので、簡単な朝食をすませてから、座敷などを掃除する。
座敷を箒で掃いていたら、リンが必死の様子で箒を追いかけ回すので、途中から掃除をしているのか遊んでいるのか分からなくなった。


九時頃にヨネヤがやって来て、来るなり早速、餌台を作ろうと言う。
蔵に置いてあった材木を適当に選んで、二人がかりで適当に組み、三十分ほどで即興の餌台が出来上がった。
適当に作ったわりに出来は良くて、僕たちの作業を黙って眺めていたリンまで満足そうに見えた。
庭の、奥から数えて三番目に植わっている梅の木の近くに、出来上がった餌台を置いた。

座敷で休憩しようと家に上がると、ヨネヤは居間の窓際にいたサカエダさんに挨拶をしている。
僕が台所で麦茶を用意している間、鳥の餌台を作ったと報告しているようだった。


休みの特に予定のない日は、蔵の中にあるものを虫干ししているのだと話したら、ヨネヤは、手伝うから今からやろうと妙に乗り気だ。
今度は家の裏にある庭へ回って、虫干しをすることになった。
蔵の中に入るとヨネヤは、なんだか嬉しそうに中を見回しながら、個人宅で普通に使われている蔵、しかも土蔵に入るのは初めてだと言っていた。
確かに使ってはいるが、頻繁に動かすものはほとんどない。
奥の方には何が仕舞ってあるのか分からない箱などもあった。


二階の本を先に庭先へ引っ張り出してきて、日陰に置いた台の上に並べる。
今日は祖父や祖母の蔵書が入っている本棚だった。
大半が、古風な文体の本で占められている。
二人で取り掛かったので、昼までに本棚ひとつ分を運び出すことができた。


さすがに少し疲れたので、サカエダさんとリンに留守を任せて近所の蕎麦屋に行って昼飯を食べることにした。
ヨネヤは鴨南蛮で、僕は天せいろを食す。
帰りに夕飯の食材を買って帰った。


戻って続きをやろうかと思ったら、少し風が出てきた。天気が変わるかも知れないので、並べた本を片付けることにした。
居間の窓から、サカエダさんが僕たちの作業を楽しそうに眺めている。リンはその窓の外で、やはり温和しく座って眺めている。
全ての本を仕舞い終えてから家に戻ると、まるで待っていたように雷が鳴り出し、じきに雨が降ってきた。


夕飯を作り終えてもまだ雷雨は続いていて、座敷で外を眺めながら夕飯を食べる。リンも縁側の手前に座って空が光るのを見ていた。
結局ヨネヤは泊まっていくことになり、リンは夜になっても遊んでもらえて上機嫌だった。