電車での事

朝、出勤の電車で、小学生の一団と乗り合わせた。
座席は埋まっていたので、ドアの脇に立って壁に寄り掛かって車内の吊り広告を眺め、それから車内全体をなんとなく眺める。
小学生は男の子四人、女の子五人の集団だった。
はじめは、男女に分かれて七人掛けの座席に、向かい合わせで離れて座っていたので気がつかなかったが、時間を確認しあっているのでそうと分かった。
夏休みに出た宿題のためか、それとも遊びに行くのかも知れない。
男の子の方は、携帯ゲーム機をいじりながら、攻略の話題で控え目に盛り上がっている。
女の子の方は、二人ずつ内緒話でもするように、小さな声で会話しているようだった。時々話し相手が入れ変わったりする。


そのうちの一人、女の子のグループの右端に座っている、白いワンピースを着た女の子と目が合った。
女の子は、屈託なくにっこり笑うと、すぐに視線をグループの方に戻して、友達の話に耳を傾けているようだった。


会社の最寄り駅で電車を降りると、後から電車を降りて来た彼らが、元気に走って僕を抜かして行く。
一人、二人三人、四人、五人六人、七人八人、
おや?と思って振り返る。女の子は五人いなかっただろうか。
後ろに子供の姿はなかった。
電車はホームを滑り出すところだった。
前に向き直ると、階段をはしゃぎ声が下って行く。
たぶん、僕が数え間違えたのだろう。