キスミの電話の事

あと少しで昼休みだという頃、京都のキスミから電話が掛かってきた。
こんな中途半端な時刻に掛けてくることはあまりない。
体調はどうかと言うので、至って健康だと答える。
ヨネヤやモチヅキはあれから泊まって行ったのかなど、キスミにしては珍しく、他愛ない話をしている陰で、何か言いたいことでもあるような落ち着かない話し方をしている。
何かあったのかと尋ねると、たった今、僕の家からキスミの携帯電話に電話が掛かってきたのだという。
出てみると、切れてしまったのだそうだ。


咄嗟に僕の家に掛け直したが、今度は誰も出ない。
それで携帯電話に電話をしたのだという。
先日理由の分からない高熱を出して一日寝て過ごしていたのがぶり返したのではないかと思ったのだそうだ。
家にサカエダさんとリンは居るが、キスミに電話を掛けるとは思えない。
キスミは妙な唸り声を発してから、何事か納得した様子だった。それならきっときっと機械の調子がおかしいのだろうとキスミは呟いた。そういうこともあるかも知れない。
仕事中に悪かったなと言って電話は切れた。