電車の事

朝、電車に乗っていて、どうも空いているなと思ったら、学生は夏休みに入っているのだと気がつく。
土曜なので休日の会社も多く、普段に比べると電車の中はかなり空いている。七人がけの席の真ん中に座ることができた。
それでも二駅ほど過ぎた頃には席も埋まり、立っている乗客もいる。
向かいの七人がけの席の、ちょうど僕の正面に一人分のスペースがあるのだが、何故か誰も座ろうとしないのに気がついた。
何か荷物が置いてあるわけでも席が汚れているというわけでもない。
僕の乗っている車両の座席はそこ以外すべて埋まっている。


不思議に思ってなんとなく眺めていたのだが、電車の揺れ具合が心地良く、いつの間にかうたた寝をしていたらしい。
突然頭の上から、ねえ!と大きな声がして、驚いて目が覚めた。
顔を上げると、降りる駅に到着する所だった。女の子の声のようだったのだが、周囲にそれらしい人物の姿はない。
それに、大きな声を出す人物がいたら、それなりに周囲の注目を集めるものだが、そんな様子もなかった。
何か夢を見ていたのかも知れないなと思う。


立ち上がってホームに降りてから、今まで座っていた席の方を見ると、入れ違いに乗り込んだのか、白いワンピース姿の女の子が座っていた。