キスミの来た話

約束通り、夕方になるとキスミが瓶ビールを手土産にやって来た。
例によって、リンは嬉しそうに出迎えている。
居間に入っても、サカエダさんには気がつかなかった。サカエダさんは、やはり気にしていないようで、僕と目が合うとにこにこと笑っている。
夕方になって出てきた風が、しきりと風鈴を鳴らしていた。これのおかげで、暑いながらも、随分と気分良く過ごしている気がする。
キスミにそのことを言ったら、風鈴なんて持ってきたっけ?と言って、不思議そうな顔をした。忘れっぽい友人だと思う。


適当に作ったつまみを肴に、くだらない話で盛り上がる。
リンは、キスミにビーフジャーキーを貰って、真剣に格闘していた。キスミは犬用のビーフジャーキーをふざけて囓り、意外と旨いなどと呟いている。
そのうちに、眠くなったと言い出すので、風呂を勧め、その間に座敷に布団を敷いた。
風呂から出てきたキスミは、昨日は全然寝ていないのだと言った。
そういうことは、先に言っておいてほしいと思った。
キスミが寝てしまってから、リンと少し散歩をした。