祖母の帰宅の事

朝は、昨日と同じく祖母と一緒にリンの散歩に行った。
公園でカンダさんに会ったので、双方に紹介した。
祖母はカンダさんのお爺さんのことを知っていて、ああ、カンちゃんのお孫さん。と頷いている。当のカンちゃんは、すでに鬼籍の人だそうだ。
少し雑談をして別れる。


祖母は、昼前には帰ると言う。今度は二人でおいでよと言うと、嬉しそうに頷いた。
あたしたちの目に狂いはなかった。引き続き、家のことは頼んだよ。と言うので、努力しますと答えた。祖母は二度、頷いた。


今日は、一時間ほど残業をした。
祖母は言った通り既に姿はなく、台所のコンロの上の鍋には煮物が入っていた。
帰る前に作っていってくれたらしい。
リンと散歩に行き、夕飯を済ませた後で、祖父母の家に電話を掛けた。
予想通り祖父が出た。この家は、在宅していれば必ず祖父が最初に電話を取る。
祖母はちゃんと帰宅しているという。
祖母は照れ屋な傾向があって、面と向かって礼を言うと必ずはぐらかされるので、祖父にそれとなく伝えてくれるように頼んだ。
祖母の作った煮物を久しぶりに食べた。祖母の料理の腕前はかなりのものなのだ。
そのうち顔を見に行くよと言って電話は切れた。


しばらくして、キスミから電話が来る。
土曜の夕方にこちらに来ると言う。
今度は一人で来るのかと尋ねると、馬鹿言え、前も一人だったじゃないかと言われる。
まあ、ともかく今度も一人だ。と、キスミは言う。
開いた窓から少し冷たい風が吹き抜けて、風鈴を鳴らした。