池の跡の事

朝から相当に暑い。
あまりにも暑かったので、家中の窓を開け放ったら、途端に涼しくなった。
座敷の窓を開けると、今日も集まっていたらしい雀が、一斉に飛び上がって逃げて行く。
やはり、池があったところに集まっていたようだった。


こう暑いと、雀も水場が恋しいのだろう。
正直なところ、池は元に戻したいと思っている。
妹の話を聞いてからは、どうもその気持ちが強くなった。
それで、しばらく池の跡を眺めていたら、不思議なことに気がついた。
池に水を通すには、それなりの水路や水源が必要だろう。
けれど、庭にそんな跡はなかった。
子供の頃にも、そういったものを見た記憶がない。
一体どうやって水を通していたのだろうか。あるいは、見えないように土中に水路が作ってあったのかも知れない。


夜、祖父に電話で聞いてみたら、しばらくうーん、と唸っていたが、池から外に流す水路は確かにあったという答え。
祖父は、俺は婿養子だからなあと呟き、祖母が電話口に出た。
祖母は、父親…つまり僕の曾祖父…からあの池は面倒を見なくても大丈夫なんだと言われて育ったそうだ。
実際その通りだったので、構造についてはよく分からないという。
おかしな話だと思ったが、生まれた時から当たり前に存在するというのは、そういうものなのかも知れないとも思う。
礼を言って電話を切った。
電話の前で首をひねっていたら、リンが同じように首を傾げていた。