風鈴の事

早朝、また雀が庭に集まっている。
リンが気にしているが、別に悪さをしている様子もないので、放っておくことにする。
散歩から戻り、座敷の窓から覗くと、もういなくなっていた。


会社からの帰り、駅前に托鉢僧が立っているのを見かけた。
聞くところによると、駅前や通りに立っている托鉢僧は、ほとんどが偽物だという。
正常な托鉢というのは、大切な修行の一環であり、鉢を手に地方の都市などを巡回して、米や金銭などの施しを受けるのが本来の形なのだそうだ。
それが、都心の一定の場所に立ちっぱなしというのはおかしいのだと、京都で生まれ育った友人のキスミが話してくれたことがある。
事の真偽はともかくとしても、暑い中大変なことだとは思う。


窓を開け、居間で夕飯を食べていると、涼しい風が通り抜けて、風鈴を鳴らした。
リンもサカエダさんもこの音が好きなようで、こうして、ふと音が鳴った時は、風鈴の方に目を向ける。
音が見えるわけでもないが、暑かった昼間の熱気がすっと取り払われ、気分も清浄になる。
昨日、遊びに来た妹も言っていたが、本当に良い風鈴だと思った。