ヨネヤの話

今朝も散歩をした。
遠目にカンダさんと会った。軽く会釈を交わした。

昼休みに、昨日一緒に飲みに行ったヨネヤが今日も飲みに行かないかと誘う。
僕は別に構わないのだが、ヨネヤの奥さんに悪いような気がする。
ヨネヤの奥さんのチカコさんとは、高校で同じクラスになったことがあるので、なんとなく性格は知っていた。
明るく屈託のない性格で、クラス委員を勤めた。
クラスをまとめるのが上手かった。

ヨネヤとは会社に入ってから知り合ったのだが、彼が家で同僚の話をしたら、チカコさんが僕のことを憶えていたようだった。
高校の卒業アルバムまで見てしまったらしい。
なんとなく気が合って、歳も同じなのでよく飲みに行く。

別に飲みに行かなくてもいいんだけど、と言葉を濁すのでよくよく聞いてみると、チカコさんと喧嘩をしたらしい。
結局また、飲みに行くことになった。

飲んでいたら、喧嘩の理由が分かった。
聞いてみると、実に些細なことがきっかけで、靴下を裏返しにしたまま洗濯機に入れるなとか、別にいいじゃないかとかいうのが、そもそもの発端らしい。
裏を返せば仲の良い夫婦なのだなと思った。
ヨネヤは珍しく酔っ払い、店を出ると僕に向かって、チカコごめん。などと言っているので、それなら本人に言うように勧めた。
早速電話をして謝っていたので、そのまま帰るのかと思ったら、電話を切るなり僕の家に泊めてくれと言う。
なんだかよく分からないが、そのまま僕の家に連れて行った。

ヨネヤは、居間に入って窓際に居たサカエダさんを見ると、あれは誰だと言う。
この前、友達が来た時一緒に来た人だと説明すると、ふうんという気のない返事が返ってきた。
それから生真面目に、どうもこんばんは、などと挨拶をしている。
サカエダさんは気にした様子もなく、にこにこと頷いた。

ヨネヤは居間のソファで寝てしまったので、チカコさんに連絡を入れた。
今夜は家に泊めて、明日にはちゃんと帰すからと言うと、ごめん、よろしくね。と言われた。
声が柔らかかったので、たぶんヨネヤ夫妻は仲直りできたのだろう。少し安心した。