電話の事

朝、思いついて庭を覗いてみたが、昨日のように雀の群れがいるでもなく、せいぜい二、三羽が鳴きながら跳ね回っているだけだった。
リンも今日は、庭に興味はない様子だ。
サカエダさんは相変わらず風鈴の側で、僕の挨拶に、にこにこと笑いながら頷く。


会社の昼休みに、カネダさんに借りた本を返し、ひとしきりその本を話題に盛り上がる。明日、何か別の本を貸してくれるというので、楽しみにしていると答えて仕事に戻る。


夜、珍しく妹から電話が掛かってきたので、池で溺れかけたことを憶えているかと訊いてみる。
妹は、憶えていると答えた。
それから妹は世間話や近況などを次々に話し、そちらはどうかと訊かれたので、犬を飼い始めたと答えると、詳しい説明を求められた。
朝、公園を散歩していたら、子犬の貰い手を探している人に会い、柴犬の子犬を貰ったと答える。
日曜に犬を見に来たいと言うので承諾する。
会話を終えて、電話を切ろうかという時、妹が言った。


本当は、溺れていたんじゃなくて、近所の女の子に息継ぎのやり方を教えてもらっていたんだよ。


じゃあ、日曜ね。と言って電話は切れた。