サカエダさんとリンの留守番の事

僕の散歩の習慣も、定着してきたようだ。
子犬のリンに、人肌に温めた牛乳と子犬用のビスケットを用意して、自分も朝食を摂る。
卵焼きを一切れリンに差し出すと、おいしそうに食べた。

サカエダさんとリンは相性が良いらしい。
安心して留守を任せられる。

会社でヨネヤに礼を言われた。
僕はいっこうに構わないので気にするなと言ったら、ヨネヤはチカコさんと仲直りできたと報告してくれた。
子犬は元気かと言うので、とても元気だと答えると自分の事のように嬉しそうな顔をした。
また子犬を見に行きたいと言うので、いつでも大丈夫だと返事をした。
そういえば、ヨネヤは犬が好きだが、今住んでいるマンションでは飼えないのだと以前言っていた。

家に帰ると、リンがすっかりトイレをおぼえていたので驚いた。
早速リンの柵を外してやる。
サカエダさんは、それを横目に窓際で外を眺めていた。
きっと、サカエダさんが教えてくれたのだろう。
台風が近づいてきているとニュースで言っていた。
霧雨が降っているので、窓は閉めたままだ。
時折強く吹く風に、風鈴が、くぐもった音をたてていた。